『ストックフォト』と『時代』
私は全く畑違いの職種、しかもだいぶいい歳になってから写真の世界に入り、独学で数年かかってようやく生計を立てられるところまで漕ぎつけました。
幸いパソコンやインターネット等のIT関係が得意ということもあり、それらと撮影スキルを活かしたアイデアを組み合わせることでどうにかやっています。
その中で主な収入源はストックフォト。月収の半分以上を占めています。
写真が趣味の方は耳にしたこと、もしくは利用したことがあるかもしれませんが、インターネットを通じて写真素材を販売し、収入を得るシステムです。
ストックフォトと言えば一般的には『趣味を活かしたお小遣い稼ぎ』の印象があるのため、「ストックフォトなんかで食っていけるの?」と思われる方も多いでしょうし、そういった質問をされる事は何度もあります。「稼げるのならば自分もやりたい」といった相談も受けます。
結論から言ってしまえば、ごく一部のトップクリエイターにならない限りストックフォトだけで生活していくことは厳しいと思われます。
しかも近年はデジタルカメラが広く普及し、急速なコンピュテーショナルフォトグラフィの進化によって『素人』でも『簡単』に『綺麗な写真』が作れる時代になりました。
もちろん構図やピント、細かい仕上げなど、素人には真似できない技術もあります。しかしそれらを理解し求めている顧客はストックフォトではそれほど多くありません。
それよりも『それなりに見える写真』を『安く』仕入れたいと思うユーザーが大多数。
今は需要に対し供給が大きく上回っているため、限られた牌を奪い合う状況が生まれており、収入が減少しているストックフォトグラファーが多数います。今後さらにその傾向は進むでしょう。
…とはいえ、私もフィルム時代からカメラで生計を立ててきたような古参ではありませんし、むしろそういった古い人間をアイデアを駆使して喰らう形で現在の収入を保っているので文句は言えませんが。
なにはともあれ、一昔前のようにストックフォトで荒稼ぎできる時代はもう終わっています。それを感じたからこそ、私も写真家としての活動に力を入れるようになりました。
余談ですが、インスタ等でやっている方をよく見かける『写真AC(Photo AC)』はストックフォトの初歩中の初歩で、月数百円程度ならば素人の方がカメラもスキルも無しで稼ぐことができますぞ。私も使い道がなく捨てる写真を投げ入れ、月数千円程度になっています。いわば小銭を生んでくれるゴミ箱ですな。