『無断使用』と『著作権』

パソコンやスマホ、インターネットの普及により、今や誰でも簡単にネット上に公開された画像を検索・保存することができる時代になりました。

ある程度知識があるカメラマンであれば著作権・肖像権・使用権に関しては熟知しており、そういった部分に対し人一倍神経質になるものですが、一般の方はいまだに『ネット上に公開されている画像は自由に使って良いのでは?』といった認識の方まで存在します。

善悪のわからない子供ならばまだしも、企業や自治体の担当者ですら必要な画像があればとりあえず画像検索。そしてそのまま保存して使用(著作権の確認すらしない)というケースは少なくありません。

私もネット上に公開した写真をイベントチラシで無断使用されたり、SNSに投稿されたり、あろうことかフォトコンテストにまで応募された経験があります。

さすがにフォトコンテストはどうかと思いますが、「ちょっと使うだけなら問題ないだろう」「この写真は素敵だから保存しておこう」といった感覚の方は多いかもしれません。

これはあくまで私個人の考えですが、たとえ親しい友人であろうとも何の断りもなく保存・二次利用(たとえ個人的な用途だとしても)されるのは不愉快です。
(SNSに機能として実装されている保存ボタンなどは問題無し)

スマホ等で気軽に写真を撮影することに慣れた方には想像できないかもしれませんが、我々は1枚の写真を撮るために多くの経費と労力を費やし、神経をすり減らして仕上げています。

「いい写真だから使わせてね」「うん、いいよ」といった軽いノリの話ではないのです。

今はカメラというものが身近になりすぎて、写真の価値は著しく下がりました。

欲しい画像があればネット検索、良い写真があればダウンロード。ダウンロードできなければスクショして切り取り。デジタルデータとなった写真はほぼ無劣化(pixel低下などはあり)でコピーすることができ、簡単に自分のもの(と勘違いする形)で保有できます。

芸能人の有名税ではありませんが、私もこういった形で作品を公開している以上、無断使用されるケースがある…という覚悟はしています。

しかし「そういう時代だから仕方がない」とも思っていません。

今は世の中が便利になりすぎたせいで自分本位の人間が多くなり、なんでも屁理屈をこねればいいと思っている輩も多くなりました。

「だったら公開しなきゃ良いだろ」「デジカメなんだからカメラさえ買えばほぼ原価かかってないだろ」「自分の写真が使われたら普通は嬉しいだろ」など、思慮の浅い反論も耳にします。

たしかに写真は絵画などと違い、被写体の力を借りることで瞬間的に生み出せるものではあります。しかし他の創作物と同じように著作権というものが撮影者に帰属し、権利の譲渡もしくは使用権を取得しない限り、無断で使用することは失礼な行為であり犯罪でもあります。

ネットで拾った画像を『拾い画』などと言い、SNSやブログ投稿など、なんらかの目的に二次利用することが当たり前のようになっていますが、それは決して『落ちていたものを拾っている』のではなく、『誰かの所有物を盗んでいる』のです。
(フリー素材やストックフォトなどは除く)

たかが1枚の写真で大げさな…と思うかもしれませんが、そのたかが1枚のために命を削っている酔狂な人間もいるということを知り、正しい知識を身に着けて欲しいと切に願うばかりです。